中国四川省重慶市、四川美術学院訪問と北京への研修旅行

期間
2007126‐1211

アーティスト
笛田 亜希、藤田 勇哉、太湯 雅晴、北村 直子、三宅 一樹、ミヤケマイ、武藤 亜希子、中田 ナオト


 香港の国際弁護士 仇浩然(Hallam Chow)さんは現代アートに大変造詣が深く、日本のアーティスト・石田徹也のファンでもあり、シャネルでの展示の時に作品を2点、素晴らしい値で落札してくれた人です。彼は四川美術学院の羅中立(Ruo Zongli)院長と懇意で、羅先生の名前のついた奨学金を個人的に作っていました。四川美術学院は現代アートでは張暁剛(Zhang Xiaogang)初め有名な作家を多く輩出している名門です。

 ハラムがこの四川美術学院の羅中立奨学金の展覧会に団DANSの作家と来ないかと、2007年初春に誘ってくれました。中国に疎い私は何よりのチャンスと思い作家達に声をかけたところ、同行を希望する作家達十数名いて、彼らと一緒に重慶と北京へ旅行する事になりました。

 四川省重慶では学ぶ事がいっぱいありました。飛行機を上海で乗換えて重慶に着き、出迎えの日本語の上手な女性の案内で学院の車で美術学院に向かいました。途中、山水画に出てくるような雄大な深い谷間の霧(スモッグ?)の中に二本の川(長江と嘉陵江)が合流しているのが見えました。重慶はこの二つの川の合流する土地に発展した古い都です。中国でいつも驚かされるのは人の多さとスケールです。学院のキャンパスは広く、昔、戦車の倉庫だった所が展示会場になっていて学生達の大作が展示されていました。煉瓦作りの時代ものの大きな建物は学生達のスタジオでした。一人の作家の持つスタジオは広く、天井は高く、素晴らしい環境で、作品も相応して大きな作品が多くみられました。中国の学生達の自分をアピールする積極性は目を見張るものがあり、英語を話す人もおりました。絵画部門だけを見学しましたが、素晴らしい写実力を持った学生や感情表現の豊かな作品が多かった印象です。作家達は美術学院の寮に泊まらせて頂き、食事は学生達と一緒にとりました。我々は学院から大変な歓迎を受けて、とても有り難い経験をさせて頂きました。一番残念だった事は言葉が通じなかった事です。語学の必要性をひしひしと感じました。

 羅院長と学部長のフェン・ビン(Feng Bin)さんとは、それからも御付き合いが続いています。昨年、久しぶりにフェン・ビンさんから連絡がありました。重慶の中心からちょっと離れた所に素晴らしく広大な芸術大学の町が出来て、四川美術学院は其処へ全て移り、引退される羅先生の名前のついた大きな美術館ができ、学生寮も新しくなったので、ついては展覧会をするので団DANSの作家を送って来ないか、との話でした。早速、作家二名が展示に行き、彼等から話を聞くのを楽しみにしていました。二人は大変丁重に迎えて頂いたそうで、そのスケールにはビックリしました、と帰ってきて話してくれました。近いうちに又、是非、私も訪問したいと思っています。

 さて、その後重慶から北京に飛び、東京から新たな作家も参加して、故宮博物館や中央美術学院、現代アートのメッカと言われる798芸術区とその周辺のギャラリー地区等を見学しました。798芸術区は昔、ロシア軍の火薬庫があった所だそうで、土地が安いので自然に作家が集まってきたような話を聞きました。そこの作品サイズの大きさと作家達の豊かさに驚くものがありました。何故、これ程中国の現代アートは盛んになったのか?火付け役の有名なユーレントさんの力もあると思いますが、戦争や文化大革命等で長年の文化を失ってしまった中国の人達にとって、現代アートは新しい自分達のアイデンティティーの発露、希望だったのかも知れません。又、そこに欧米のマーケットが目をつけて、中国経済の成長と相まって中国の現代アートは売値が憶を越える作家が何人か出ました。恐らく投資としても良い分野だったと思います。798スタジオの20代の若手作家のお洒落なアトリエを訪問した時に、大きなアメリカの車ハマーや洒落たイタリア製の家具が置いてありました。20代でこれ程裕福になったら今後何が目的なの?とちょっと意地悪い質問をした所、「私は北京にレストランのチェーンを持ちたいのです。」という答えが返ってきて驚きました。日本とは又、違う文化と価値観の国だなあ、と学ぶ事の多い旅行でした。

 北京の若い作家の洗練された生活を見た団DANSの作家達は何を思ったでしょうか?後に、作品では負けないぞ!という自負心を団DANSの作家達が持っている事を知って、私は嬉しくなりました。

 とかく日本人は絵画そのものの意味より、絵の具の質、カンバスの質など道具にも気が引かれてしまいます。中国人作家のほとばしるエネルギーと表現力とは対照的な気がしました。日本人が質やディテールにこだわる所などは、どこか私達には工芸的な職人気質が根っこにあるような気がしています。

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